大手損害保険会社に10年以上勤務の後、法科大学院を経て司法試験に合格し、2007年12月より弁護士として勤務。2008年4月企業科学専攻企業法コース(博士後期課程)に入学、2016年3月博士号取得。
損害保険会社における実務経験、法科大学院で得た法学知識、さらには弁護士としての実務経験をベースとして、より専門的な学術研究を行い、その成果を論文として発表することが、知的探求心の充足や社会貢献、自己のキャリアの発展に資すると考え、入学を決意しました。
筑波大学は社会人大学院のパイオニアであるため、信頼がおけましたし、社会人学生に対する研究環境面での配慮や同様の立場にある学生仲間との切磋琢磨が期待できました。また、校舎が自宅から至近だったので、研究上便宜だったのも魅力でした。
履修にあたっては、研究テーマに関連する法分野(金融法、手続法)や外国法の科目はもちろん、日常業務に関連する科目や個人的な関心がある科目も履修し、法学のみならず、会計学などの分野の科目も意欲的に受講しました。
日常業務と研究活動との両立は大変困難でした。研究テーマが弁護士会務(弁護士会の公益活動)と関連していたため、会務における調査結果を研究に反映させるなど効率化を工夫しました。最終的には、当座の生活資金を確保し、業務時間を大幅に削減して、まとまった研究時間を捻出しました。
博士論文を作成するにあたっては、国内外の多数の文献にあたり、論文を構成するいくつかのテーマについて考察しました。また、数回学術誌などに論文寄稿をしました。これらの論考を総括して、新たな追加的外国文献調査からも示唆を得て、わが国における課題についての検討結果をまとめました。
日常業務には直結しないものの、論文作成を通じて修得した外国法制度に関する知識、語学力などのスキルは、弁護士会における海外調査や外国の学術論文の翻訳受託などに生かされています。今後は、機会があれば、大学教員として教育・研究にもあたれたらと思います。
博士論文を完成させるには、多大な労力と時間とを費やすことは避けられません。しかし、あるテーマを徹底的に探究して、新たな知的水平に達することの価値は何物にも代えがたいと思います。追及したい法学上のテーマのある方には、ぜひ本学での研究をお勧めします。